倉庫と工場の違いって何?倉庫を工場として利用できるケースと注意点

工場を探している際に、広さや立地などの条件に合う貸倉庫を見つけた場合、工場として利用できるのか気になりませんか? 倉庫と工場には多くの違いがあるため、異なる用途で使う場合には注意が必要です。

今回は、倉庫と工場の違いと併せて、倉庫を工場として利用できるケースと注意点を解説します。

倉庫と工場の違い

見た目が非常に似ている倉庫と工場は、建築基準法上ではどちらも「特殊建築物」と定義されています。ただし、主に建物の使用用途によって、異なる建物として取り扱われています。

物件を探す前には、倉庫と工場のそれぞれの特徴を把握し、どのような違いがあるのかを理解しておくことが大切です。

倉庫とは

倉庫とは、商品在庫や販促資材などを保管・管理するための建物です。

工場とは

一方の工場は、食品や商品の製造、板金、塗装、加工、組み立てなどの作業を行うための、規模の大きい建物です。

倉庫と工場の違い

倉庫と工場では、建物の使用用途が異なります。

建物を建築する際には、使用用途を申請しなければなりません。そこで、不動産登記法の「建物の種類」が「倉庫」の建物を、「工場」として使用するなど、異なる用途で使用することは認められない場合があります。また、荷物を保管するための倉庫とは異なり、作業を行う工場は騒音や振動のリスクもあるため、建物を建築できるエリアも異なるのです。

ただし、貸倉庫として貸し出されている建物でも、工場として使用できる場合もあります。一口に倉庫といっても、

・使用用途が倉庫のみに限られている物件

・貸主から軽作業程度であれば許可がもらえる物件

・行政に用途変更することで本格的に工場として利用できる物件

など、物件によって使用できる範囲が大きく異なるからです。

特に、本格的に工場として利用することは許可していなくても、軽作業程度であれば許可しているところが多くあります。作業の程度によっては、貸倉庫として募集している物件を工場として利用できる可能性もあるため、物件の選択肢が増えるでしょう。

貸倉庫を工場として利用できるケース

前述した通り、貸倉庫として募集している物件を、工場として利用できるケースもあります。どのような場合に利用できるのか、3つのケースをご紹介します。

ケースその1.軽作業のみの利用

貸倉庫を工場として利用できるケースで多いのが、軽作業のみの利用です。

商品の検品や梱包、機械や部品などの組み立てなどの業務の場合、貸倉庫でも作業できる場合があります。軽作業であれば、騒音や臭いなどのトラブルが生じるリスクが少ないからです。

一方で、大型機械を使うといった大きな音が発生する作業や、大量の塗料を使った臭いが発生する作業などは、トラブルが生じやすいため許可が出ないケースがほとんどです。

ケースその2.倉庫と工場との併用

貸倉庫を工場としてではなく、本来の使用用途の倉庫スペースと作業を行う工場スペースとして併用することで、利用できる場合があります。ただし建物の用途地域によっては、「倉庫の敷地面積の何割かに限り工場として使ってもよい」というルールがあるため、注意が必要です。

ルールに則り、貸倉庫の限られたスペースだけを工場として利用する場合は、貸主から許可が出る可能性がありますので、ルールを確認した上で交渉してみましょう。反対に、貸倉庫の大部分を工場として利用したい場合は、そもそもルールに反しているため利用できません。

本格的に工場として建物を利用する場合は、初めから工場を探すか、用途変更が可能な倉庫を探すことをおすすめします。

ケースその3.貸主が許可済み

建物の種類が倉庫であっても、貸主が工場としての利用を許可した場合は、工場として利用できる可能性があります。まずは貸主に交渉してみましょう。

建物の用途変更が可能

貸主にレイアウトを変更する内装工事の許可をもらっており、建物の用途変更が可能な貸倉庫であれば、本格的な工場として利用できる可能性があります。

大掛かりな工事が必要になる場合、初めから貸倉庫ではなく貸工場を借りたほうがよいように思いますが、希望する条件に合う物件を見つけ出すことは容易ではありません。条件にぴったりの物件が倉庫の場合は、工場として使えるかどうかを一度確認してみることをおすすめします。

貸倉庫を工場として利用する際の注意点

用途変更が可能な貸倉庫でも、工場として利用できない場合があります。建物の使用に関しては法律的な問題があるため、勝手に工場として利用できません。

貸倉庫を工場として利用する際に注意したい、3つのポイントを解説します。

業種によっては行政許可が下りない

事業内容が行政の許認可が必要な場合、内容をクリアしなければ工場として利用できません。行政の許認可が必要な業種は約1,000種類あり、届出や免許、許可、認可など、それぞれの業種によって手続きや窓口が異なります。

せっかく貸倉庫を借りても許認可されなければ使えないため、必ず借りる前に確認しましょう。

騒音や臭いへの配慮が必要

貸倉庫を工場として利用する場合には、周辺環境への配慮が必要です。

業種や事業内容によって騒音や臭いなどが発生すると、近隣の住民からクレームが来る可能性があります。これまで倉庫として使われていた建物がある日突然工場になると、近隣の住民も環境の変化に対応できないでしょう。

倉庫を借りた後にクレームによって工場として利用できなくなることを避けるためには、貸主と賃貸借契約を結ぶ前に、過去にトラブルが生じていないかをしっかり確認しておくことが重要です。

また、希望する条件にぴったりの物件でも、工場として利用するにはふさわしくない場所にある場合は、再検討したほうがよいでしょう。

貸主が許可しない

用途変更や行政の許認可がクリアできても、貸倉庫の持ち主となる貸主が許可しなければ、当然ながら工場としては利用できません。

貸主の許可を得ないまま内装工事を行ったり、工場として利用したりした場合、契約違反として契約解除となる恐れもありますので、契約内容は必ず守りましょう。

貸倉庫&貸工場選びでチェックしたいポイント11選

貸倉庫や貸工場を探す際にはコツがあります。業種によって留意すべきポイントは異なりますが、どのような業種でも押さえておきたい11のポイントを解説します。

広さ

最も重要なポイントが倉庫の広さです。用途に見合った広さがあるのか、必ず確認しなければなりません。

天井の高さ

保管する荷物や導入する設備によっては、高さが必要になる場合があります。特に、天井の高さは見落としがちですので、注意しておきましょう。

出入口の大きさ

荷物の搬出入をスムーズに行うためには、出入口の大きさのチェックも欠かせません。出入口が狭いと、荷物を出し入れできなくなり、業務がストップしてしまいます。

空中階の場合はエレベーターやリフトの大きさも確認しておきましょう。

あらかじめ必要な幅と高さを計測しておくことが大切です。

電気の容量

過去に倉庫や工場として使われていた物件でも、業種によって必要な電気の容量が異なるため、キュービクルの有無や電気の容量も確認しておきたいポイントです。

電気の容量が不足している場合は、貸主の了承を得た上で別途電気工事が必要になります。

梁の有無

天井の高さと合わせて確認しておきたいのが、梁の有無です。天井の高さがギリギリの場合、梁が邪魔をして荷物の搬出入ができなくなったり、大型の什器や資材を置けなくなったりする可能性があります。

倉庫を満足に利用できなくなるため、梁の有無や位置を確認しておきましょう。

気温・湿度

温度変化に敏感な荷物を保管する場合は、気温や湿度の確認も必要です。

一般的に、湿度が70%を超えるとカビが発生しやすくなるため、空調の有無や湿度の管理体制をしっかりと確認しておいてください。

駐車場の有無

荷物の搬出入には、車を使用することが多いでしょう。営業車やトラックの駐車スペースがないと、荷物の出し入れがスムーズにできなくなり、業務が滞ってしまいます。

また、倉庫や工場の前の道路に長時間にわたって車を停めていると、渋滞の原因となり、近隣からクレームが来る可能性があります。

荷物の出し入れや商品の出荷などを頻繁に行う場合は、十分な駐車スペースが必要です。

床の耐荷重

どれぐらいの重さの荷物を保管できるのかは、倉庫や工場の構造によって異なります。大型什器などの重量のある荷物を保管する場合は、床の耐荷重の確認が欠かせません。

道路の幅

荷物の搬出入にトラックを使用する場合、倉庫や工場が面している道路の幅の確認も必要です。

アクセス

交通アクセスもチェックすべき重要なポイントの一つです。最寄り駅や最寄りのインターチェンジまでの距離は、倉庫を選ぶ際に重視しなければなりません。

雇用

貸倉庫や貸工場で、従業員やパート、アルバイトなどの雇用を考えている場合は、必要な人員を確保できるのかの確認が必要です。

貸倉庫や貸工場の近隣にまとまった住宅があれば、採用活動をしやすいでしょう。

まとめ

貸倉庫を工場に利用できれば、選べる物件の幅が広がるため、より条件に合った物件を見つけやすいでしょう。ただし、倉庫を工場として利用する際は、用途地域や周辺環境を確認し、貸主の許可を得ることが重要です。

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